白井 裕子「森林で日本は蘇る」を読む

2022年3月6日日曜日

読書感想文

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▽これからの時代、日本の成長産業は農業だという声はよく聞く。農産品の輸出も増えているらしく、力を入れている分野なのだろう。ただ、食料自給率においてはまったく増える気配はないので、農産品をブランド化し海外に高く売ることで利益を上げようという方針なのかもしれない。成長分野、自給率という面では林業も農業と同じく非常に伸びるポテンシャルは秘めている。資源を考えても日本の国土の3分の2は森林だ。農産物と比べると、生育するのには時間がとてもかかるけれど、戦後に植林した杉や檜は伐採適期になってきている。沢山売る材木があってまさに成長分野、とはなっていない。

「森林で日本は蘇る」を読み進めていく。確かに多くの木が森林から刈り出されてはいるのだけど、実際は補助金が入り、材木自体は叩き売られているそうだ。売れないからバイオマス発電のために丸太ごと運び込まれることもあるなら無駄でしかない。日本でバイオマス発電がうまくいかない理由が指摘されていて、それはヨーロッパとの木の違いがあるという。雨が多く湿度が高いという日本の特徴が反映されているのか、杉は含水率が非常に高く乾きにくいのでバイオマス発電には向いていない。広葉樹のほうが含水率は低いけれど、それでも年単位で乾かす必要がある。いや、そもそも建材や家具に使えるのに燃やしてしまうというのは非常にもったいない話だ。建築基準法によって伝統的な木造建築が衰退していることで良質な材木需要がない。そして腕のある職人が減り技術も失われていく。納得のできる質の高い仕事が出来なければ製材所や森林のオーナーも矜持を保つのは難しいだろう。

この本を読む限り、林業が成長分野なのか分からなくなってくる。底にあるという意味では成長の余地はまだまだある。建築基準法などの法律を中小の会社が活躍できるように変え、補助金でジャブジャブ状態からの脱却、家を建てようとする人の意識の向上。もしくは杉や檜をブランド化し高級材として海外へ輸出するか。素人が考えても仕方ないので、農業とともに林業の活性化を望みます。

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