中島直人「アーバニスト 魅力ある都市の創生者たち」を読む

2022年4月8日金曜日

読書感想文

t f B! P L

▽これからの日本はますます少子高齢化が進み、経済大国としての強みもなくなり、気候変動対策も求められる。物質的な豊かさから転落していく、言い換えれば国全体が貧乏になっていくということだけど、そう悲観することではない。戦後に高度成長しすぎたことが異常なのだ。経済的な復興を掲げる政治家がいるけれど、たまたま良かった時期があるだけで、ジャパン・アズ・ナンバーワンなんてのは夢幻でしかない。

そのような時代を経て、町であり都市の姿は変遷を遂げてきた。科学技術の発展とともに機能として便利になった部分はあるだろうけど、都市が郊外にむけて無秩序に広がっていた、というか侵食していったという言い方のほうがいいかもしれない。私が住む所沢周辺にも戦後に造成されたニュータウンがいくつもある。駅からは遠く、大型ショッピングセンターなどの出現、利用者の減少で小さな商店が廃業していくと、高齢者には暮らしにくい地域になってしまう。若者がわざわざそのような場所に移り住むのはまれで、空き家は増えていく一方だ。それでいて畑や林が住宅に変わっていくので非常に歪に感じる。

町への問題意識や不信感があり、これからの町づくりにヒントがあるのではないかと思ったのがこの本を手にとった理由だ。アーバンというのは都市や都会的というハイセンスな人や物という認識があるのだけど、タイトルのアーバニストというのは都市計画の設計者やプランナーであったり、都市に住み積極的に関わっていく人、という意味らしい。本の中ではこの後者の重要性が強調されている。まちづくりという運動とほぼ同義だと思うけれど、あえて都市という所に意味があるのかもしれない。都市というのは東京や大阪、名古屋のような都会をイメージしてしまうが、私の住む所沢も都市といえば都市なのだろう。

都市計画に市民がしっかりとコミットして暮らしやすい地域を作っていくことは非常に重要だ。ただ、郊外も都市化させていく必要はなく、むしろ切り離していく必要があるのではないか。アーバニズムではなく、まちづくりでもなく、むらづくりの必要性を感じる。所沢で考えれば、本来的な都市は所沢駅から西所沢駅方面の市街地だけだ。私が住む地域やそれ以外の地域の多くも雑木林や畑が広がっていて、現在では住宅が立ち並ぶ中途半端に都市化の波にさらされた形になっている。中心部は都市としてブラッシュアップさせ、首都圏として郊外は農や自然環境が充実した地域を車の両輪のように育てていくことが健全な町ではないか。つくづく私は都市の人間ではないと思った。


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