武蔵野点描、新聞の社説から考えるこれからの社会

2021年1月5日火曜日

武蔵野

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▽1月3日の各新聞社の社説に考えさせられることがあった。年の初めの社説とあって各社大きなテーマで書かれている。どこにスポットを当て、どのように語るかもそれぞれの色があるので読み比べてみるのもなかなか面白い。別のブログで毎日各新聞社の社説のタイトルとリンクを書き出しているので、ざっくり世の中を俯瞰するのに役立つのでオススメだ。

「コロナ禍と世界 国際協調体制を立て直す時だ」読売新聞

やはり2021年を語るのに新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は外せない。なぜここまで急激に、そして世界中に広まってしまったのか。様々な場所に飛行機が飛び、経済の繋がりが深まり、多くの国の人々が豊かになり、それらに伴って人の移動が活発になり、一言で言うならグローバリズムが進んだからだろう。一概にグローバリズム社会を否定することはできないけど、その帰結がウイルスの拡散だ。これがもっと致死性の高いウイルスだったらと考えると寒気がしてくる。

「民主主義の試練と世界 弱者への視点を強みに」朝日新聞

新型コロナウイルスに対する各国政府の対応は様々だ。日本においては評価に迷うけど、ドイツのメルケル首相のように力強いメッセージを出す国、台湾のように抑え込みに成功する国もあれば、ただの風邪だと主張する首脳、感染者は1人もいないとする独裁国家もある。感染症のようなイレギュラーに対応するためには民主主義国家よりも、中国のように強い権限のある政治体制のほうがいいのではないか。そのようなことが問われ始めているけれど、確かに中国のように都市を封鎖するような強圧的な権限は民主主義国家にはない。日本で東京を封鎖するというような強引な手法をとれば反感を買うのは目に見えている。後手後手に周り、右往左往しているのが現状だ。民主主義は限界に来ているのか。

「陛下メッセージ コロナ禍で結束を新たに」産経新聞

天皇制度というのは世界的に見ても独特で、多くの国民の心の拠り所になっている。新型コロナウイルスが蔓延する社会において、天皇陛下の言葉に励まされている人は多いかもしれない。日本人においてパトリオティズム(愛国心)の旗印になるものはなんだろう。アメリカにおいては合衆国憲法かもしれないし、フランスにおいては革命によって手にした自由平等友愛の精神かもしれないし、中国においては共産主義かもしれないし、ある国においてはキリスト教やイスラム教などの宗教かもしれない。日本の憲法や民主主義は自らが築いたものとは思えないし、平和主義は防衛費の増大や自衛隊の軍隊化議論や海外派遣など、どうも揺らいでいる気がする。極端な右的思考の人は日本民族と言うかもしれないけど、グローバリズムによって曖昧になってきているし、先住民族とされるアイヌや琉球の人たちはどうなるのか、そもそも弥生人と縄文人は?そうなると天皇がパトリオティズムの根源となりえるのだけど、はっきりいってジェンダーや人権を世界標準で考えると相容れない。皇族には戸籍がなく、血統主義、天皇になれるのも男性だけだ。それに天皇を旗印にして失敗した歴史があるので過剰に引き立てるのは好ましくない。

「年のはじめに考える トコロジストの勧め」東京新聞

最後に東京新聞の社説。トコロジストというのもどこか気の抜ける言葉だ。トコロというのは所のことで、場所の専門家がトコロジストということらしい。パトリオティズムというのは国に対する忠誠心みたいなもので大仰なものだけど、郷土愛、愛郷心なら多くの人が持てるのではないか。日本という巨大なくくりではなく、私でいえば埼玉、所沢に対する愛着は少なからずある。もっといえば所沢市はただの行政区なので、荒幡というのがご先祖が長く暮らしてきた地域で郷土愛の対象と思える。トコロジストになるには歩いて動ける範囲くらいがちょうどいいのではなかろうか。グローバリズムが新型コロナウイルスの世界的な拡散を招いたのなら、トコロジスト的に小さい範囲で生きることもこれからの社会の1つの在り方だ。

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