西村豊「干す」を読む

2021年7月12日月曜日

読書感想文

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▽「干す」というタイトルだけみるとなんだか意味が分からないけど、表紙が大根の干されている姿なので内容は想像できると思う。いや、もしかしたら若い人はこれが大根が干されている状態とは思わないかもしれない。畑を自分でやったり田舎に住んでいない限り大根というのはスーパーに並んでいるか、食卓に調理されて出てくるものだ。といって、私も大根が干されるすべての理由を知っているわけではない。一番始めに頭に浮かぶのは切り干し大根だけど、表紙のように切らないのは漬物用に干している。この干し方以外にも、葉の部分を切り、交互に積み重ねていく「井桁干し」や、おでんサイズに切り、それをそろばんのように刺して干す「寒干し大根」も紹介されている。

話が前後するけど、こちらの本は西村豊さんによる「干す」をテーマにした写真集。私も野菜を育ててはいるけれど、干すという作業はしていない。周りを見渡しても、農家は少なくなって軒先に収穫した野菜を干すという光景はあまり見られなくなってしまった。たまに玉ねぎか柿を干しているのを見かけるくらいだろうか。記憶にはほとんどないのだけど、私が住む地域の野菜を干す光景を見てみたかったと今になって思う。武蔵野の写真を撮る中では、川越や狭山の田んぼで藁を干しているのは見かける。それも一部の田んぼでやっている程度。この写真集でも、被写体になる干す光景を探すのに苦労したようだ。写真集のための撮影でなんと15年もの時間をかけているらしい。形にするというのは大変なことですね。

写真集を眺めていると大根だけでなく様々な「干す」があることが分かる。豆腐、唐辛子、くるみ、ほおずき、柚餅子、餅、寒天、さらには魚介類など私の理解を越えていた。しかも干すというのは食べ物だけの話ではない。鯉のぼり、布、弓、扇子、臼、バイオリン、傘、杮板、最後は富士山頂での布団干し。干す文化は想像以上に深いようです。

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