水俣とユージン・スミス

2021年9月10日金曜日

映画 写真

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▽前に何かの記事で知ったのだけど、ユージン・スミスが取り組んだ水俣での撮影がジョニー・デップ主演で映画化されている。日本では9月23日から公開が始まるのだけど、アメリカで当然先行上映されているかと思いきや、公開日は未定ということでなんとも不可思議だ。どうやら配給会社がジョニー・デップのイメージ低下を気にして、公開に後ろ向きらしい。この「MINAMATA」はジョニー・デップが製作にも関与するほど並々ならぬ思いで作り上げた映画だ。それが本国で上映されないというのはきっと憤っているに違いない。水俣で起きたことは多くの人がもっと知るべきだという思いが彼にはあるそう。確かに、この問題は終わっていないし、世界中の様々な場所で同じようなことが起き、現在もきっとどこかで起きている。


水俣病というのは教科書にも載るくらいセンセーショナルな事件で、1950年代に表面化し、大きな犠牲を出しつつ21世紀になっても訴訟は続いていた。とはいえ、もう何十年も前に起きたことなので、知らない人は多いかもしれない。日本以外だとなおさらだろう。それに、ユージン・スミスという水俣を撮った写真家にも注目すべきだ。実をいうと私が非常に尊敬する写真家の一人でもある。手元にある書籍はこの「楽園へのあゆみ」しかないのだけど、図書館かどこかで見た写真集のユージン・スミスの作品は心に響いた。プリントも美術館かどこかで見た気がする。それにこの本に書かれているユージン・スミスの人間像はとても興味深い。始めの頃は若さゆえか戦場に出向き、センセーショナルな写真を求めていたのだけど、大怪我をしてからはまだ光の当たっていないことへフォーカスしていく。しかもただその場に行って撮るだけでなく、徹底的に調べ上げてから撮影に挑んでいた。私としてはそのすべてを参考にすることはないけれど、学ぶことは多い。そして面白いのはユージン・スミスは酒に溺れていたり、女性にだらしなかったり、わがままで向こう見ずだったりする。それでも水俣の人々には愛されていたようで、人間的な魅力にあふれていたのだと思う。そのようなわけで、水俣やユージン・スミスにあらためてスポットが当たることは素直に嬉しい。

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