▽先日、写真集の話で写真を作品として販売することが難しいことが、日本で独自の写真集文化の形成に影響した、というようなことを書いた。というのも、写真はその特性上何枚でも同じプリントを作成できてしまう。今はデジタル写真で撮った写真を、自宅のプリンターで出力すれば手間も時間も費用もそうかからない。それをアート作品として販売するのは骨が折れる。私の作品でいくつか売れたのは和紙にプリントし、廃材の板に貼り付けた「樹は巡る」というシリーズで、これは唯一無二で同じ作品は制作できないので、アート作品としての価値は付けやすい。なので、通常の写真には名前のサインと共にエディション、例えば1/20、2/20というように20枚作成したうちの1番目、2番目というようにナンバリングする。これと同じような仕組みなのが版画作品だ。
美術界の信頼回復を図るのは容易ではない。文化庁と業界団体は、事件を機に偽作を排除する仕組みを設け、再発防止に努めねばならない。 平山郁夫や東山魁夷ら有名画家の偽版画が大量に出回った事件で、警視庁は元画商と版画工房代表の
こちらは10月3日の読売新聞の社説。平山郁夫や東山魁夷の偽物の版画が多く出回っていたとして大きく報道されたのは記憶に新しい。版画も絵画などの一点物とは違い、写真と同じように沢山の作品を刷ることが出来る。作者の原版が残っていて劣化していなければ同じような作品が刷れるかもしれない。この贋作騒動は本物をパソコンで取り込み、解析した上で複製を量産していたらしく、なかなかに巧妙だ。読売新聞は本物を保証する仕組みの重要性を指摘している。作者の意図しないところで本物を装って利益を上げようとするのは腹立たしいことだ。最近はツイッターの最初のツイートが高値で販売されたことが話題になっていたので、デジタル空間では真偽を保証する技術が既にあるのかもしれない。リアルの作品にも同じようなことが可能なのだろうか。いずれにせよ不届き者がいない社会であってほしいものです。