神宮外苑地区の街づくりについてより |
▽明治神宮外苑が再開発されることにともなって「日本イコモス国内委員会」が見直しを求める提言をしたという記事を東京新聞で目にした。私が住む所沢でも駅前再開発が活発に行われており、環境問題が叫ばれ、日本の人口は高齢化し少子化する中で減少し、経済も縮小傾向が続くのは明らかなのに、なぜ前時代的な商業開発が行われるのか理解ができない。何度も書いているけど、雑木林やビオトープを意識した水場のほうがよっぽど暮らしの質はあがる。明治神宮外苑の場合は当然所沢の駅前開発とは違い、また別の問題が含まれているようだ。
明治神宮外苑は明治神宮がシンボリックな自然を持つように、東京都心部でありながら多くの木々が植えられ、都会のオアシスと言っていい場所だ。自然豊かとはいっても明治神宮、及び外苑が作られたのは明治天皇が崩御された後なので、何百年という歴史があるわけではない。けれど、明治神宮を見て分かるように、木々の選定と管理の巧みさによって、森と形容したくなるほどの見事な林が育っている。それは大都会として変貌していった東京においては、まさに奇跡といっていいほどの豊かな自然だ。明治神宮外苑も同時期に整備されたので、植えられている木は100年ほどの樹齢になり、非常に誇れるものだと思う。
再開発が行われる外苑の敷地には現在野球場が2つ、ラグビー場、陸上トラック(かつての軟式野球場?)、テニスコート、ゴルフ練習場などの施設があり、これを再編成、再配置するというのだからかなり大規模な計画だ。この各施設とともに木々が植えられていて、再開発するには邪魔なので切らなければいけない。その数が1000本という話なので東京の自然を愛する人達の間で守ろうという動きが活発化してきている。
署名サイトとして有名なChange.orgでキャンペーンが始まっていた。まだ多くの署名が集まっているわけではないし、ウェブでの署名にどこまで効果があるか分からないけれど、多くの賛同を期待したい。
今回の計画では大量の木々の伐採が注目されているけれど、何が開発で建設されるかも問題だ。本来は明治神宮、外苑付近は自然的景観を維持するための風致地区に指定されており、伐採は制限されているし、建物の高さも20mまでとされている。風致地区としての指定が解除されたのか確認出来なかったのだけど、各施設の高さはラグビー場が60m、複合棟Aが185m、複合棟Bが80m、野球場併設ホテル60m、事務所棟190mなどとなっている。今ある施設を取り壊しての整備なので、ものすごく大規模な再開発計画だ。商業施設、ホテル、野球場にラグビー場、都民はこのような計画を歓迎しているのだろうか。私は埼玉県民なので文句を言う筋合いではないのかもしれないけど、明治神宮創建以来守られてきた精神まで蔑ろにするような計画にはまったく賛同できない。
施設として残すのが神宮球場とラグビー場だけで、老朽化が問題ならこの2つだけ改修すればいいのではないか。高層建築などは作らずに、新たな自然を創出することこそ先人が求めることで、歴史を紡いでいくことに繋がるのだと思う。