塩見鮮一郎「差別の近現代史: 人権を考えなおす」を読む

2020年12月24日木曜日

差別 読書感想文

t f B! P L

▽差別はなぜなくならないのだろう。漠然とそう思っていたのだけど、私の中にも差別意識がある。それは意識的なものなので、誰かを虐げるような発言や行動もすることはない。差別という言葉自体が独り歩きしているような気もする。例えば日本人が黒人や白人を見れば多くの人は我々とは違うと認識してしまうのではなかろうか。中国人や韓国人でも見た目は日本人と変わらないけど言葉が違えば身構えてしまうかもしれない。日本人同士でも方言を話す人とは生まれ育った地域は違うんだなと感じる。部落出身だと言われたとき、少しも感情が変化しないかと言われると分からない。
差別は日常の中に潜んでいるので可視化することが大事だ。けど、そうすることで差別する側と差別される側の間に線を引くことになる。だからこそ差別を解消する努力がされるのだろうけど、逆に分断を生んでしまうかもしれない。差別を正当化して他人を攻撃する人は必ずいるのだ。

DHC公式オンラインショップ「ヤケクソくじについて」
https://top.dhc.co.jp/contents/other/kuji_about/?sc_iid=main_side_kuji

この本を読んでいる時に、化粧品やサプリメントを販売するDHCの会長の文章が問題だと話題にあがってきた。競合する会社はコリアン系のタレントをCMに使っていると指摘、チョントリーなどと揶揄し、DHCは原料は国産、起用タレントも日本人、純粋な日本企業で、安価で商品を提供し、誰からも愛されていると会長は主張している。個人のSNSでの炎上案件かと思いきや、公式オンラインショップに掲載されているのだから企業方針といっていい。企業ぐるみで日本人を賛美してコリアン系を差別しているわけだ。売り上げがサントリーに脅かされて「ヤケクソ」になっているとしか思えない。消費者の一部はバカとまで書いているので、いろいろと問題がある。

多くの人がこの文章には嫌悪感を覚えるとは思う。けれど、日本を賛美する右翼思想の人間は同調してしまうのが現状だ。そして左翼は差別だ、人権侵害だとカウンターアクションを起こす。自由、平等、平和が唱えられ、多くの国や人は豊かになり、様々な見えない差別が可視化されてきてもなお差別や対立はなくならない。むしろ自国主義に先鋭化した首脳や政党が世界的に多く誕生し、支持されてきている。

行き詰まった経済、躍進する途上国、行き過ぎたグローバリズム、移民、難民、枯渇する資源、気候変動、少子化、超高齢化、人口減少、労働環境の変化、個人主義。。物質的な豊かさを手にしても、様々な課題や問題が山積する社会では差別のない平等な社会は生まれなかった。よりよい社会にするために、何をすればいいのだろう。あまり見えてこない。

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