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2022年1月27日木曜日

ニーナ・シック「ディープフェイク 」を読む


▽今の時代、インターネットにアクセスすると様々な情報が手に入る。このブログを書いていてもグーグルで検索してウィキペディアや必要な情報に触れているサイトを参照することは多い。虚偽情報ではないことには相当気を使ってはいるけど、完全に防ぐことはおそらく不可能だ。ウィキペディアも多くの人がアクセスして情報が正しい方向に修正はされているけど、たまたま見た瞬間にとんでもない情報に書き換えられている可能性はある。マイナーな事柄の場合は間違った情報が掲載されている状態で放置されているかもしれない。ブログに何か書かれていたとして、顔も名前も分からない人の情報を信じられるのか。匿名掲示板やSNSなんて有象無象の真偽不明の情報で溢れている。私は本名顔出しでこうして書いたり写真を発表しているけど、それであっても真実を言っているかは分からない。

私が誰かに騙されて虚偽の情報を掴まされるくらいなら世の中に与える影響は些細なことだけど、もっと大きな明確な悪意を持って世論を誘導しようとする人や勢力がいる。それがこのニーナ・シックの「ディープフェイク 」で語られていく。著者は政治アドバイザーとしてアメリカのバイデン大統領、フランスのマクロン大統領などの世界的なリーダーと関わる中で偽情報、誤情報に触れ対策を行ってきた。最前線で重要なボジションにいた専門家といえる。その立場的にロシアやトランプ前大統領のあぶり出しが多いのだけど、想像もしないことが既に起きているようだ。

世代的には稚拙な合成写真はよく目にしていたものだけど、今は加工されたのか分からないレベルになってきている。それもアプリで簡単にできるというのだから驚きだ。きっと私でもやろうとすれば顔を入れ替えるくらいのことはできるのだろう。しかも写真だけでなく動画の加工も簡単になってきているらしい。これは女性有名人がポルノ的な加工をされるという被害だけにとどまらず、政治の場面でも影響を与えてくる。実際にトランプ前大統領はフェイク情報を幾度となく拡散させていた。トランプ自身が分かりきった嘘をついているのは日本にいても分かるのに、大統領に当選し、やめさせられることもなかったのは信じがたい。議事堂に支援者が乱入した事件は選挙不正があったという偽情報にトランプ支持者が踊らされた結果だ。それにアメリカ大統領選挙にはロシアも介入していたことは我々も知っている。偽情報でアメリカ国民が踊らされ、トランプ大統領の実現、さらなる国内の分断、世界に与えた影響を考えるとロシアのしてきたことは非常に恐ろしい。それが今でも続き、中国も国内の統制だけでなく国外にも目を向け、途上国でも、一般社会でも偽情報で皆が動かされている。本書ではインフォカリプス、情報が終焉した世界という言い方が何度もされているのだけど、今後より巧妙になっていく中で我々は生き残ることができるのか。まだ希望はあるらしい。