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2022年2月21日月曜日

稲垣 栄洋「生き物の死にざま」を読む


▽生き物の死にざまとはなかなかインパクトのあるタイトルだ。この本では小さな昆虫から大きなライオンやゾウまでどうやって生き、そして死んでいくのかが書かれている。タイトルにあるようにクローズアップされているのは死だ。人間も生き物ではあるけど、野にいる生き物とは死を意識している点で大きく違う。いや、ゾウは知的な動物で、死を意識しているという方はおられるかもしれない。ゾウの墓場というのはわりと有名な話だ。この本でも書かれているけど、死を悟るとゾウの墓場と言われる場所へ向かうと言われているけれど、著者は否定している。ただそうはいってもゾウが死を意識、認識しているかはゾウに聞かなければ分からない。もしかしたら言葉のようなものがあり、人間のように高度なコミュニケーションをしている可能性だってある。

人間と動物の関係として犬という生き物は不思議だ。本来なら動物が動物に懐くなんてことはそうそう起こり得ない。行動をともにするのは同じ種族に限られるだろう。けれど犬は人間と生活をともにするようになった。著者はオオカミの群れの中で弱いものが人間に近づき、食べ残しを漁り、懐くようになったと書いている。確かに少し前の犬は侵入者に吠えかかったり、狩りの手伝いをしたり役に立つ存在だった。

ハサミムシの母親の生き様が書かれている。石の下に卵を産み、大事に大事に守り、卵からかえったと思ったら死んでゆく。それも我が子に食べられながら。なんとも残酷なシーンだけど、ハサミムシにとってはこれが当たり前の一生なのだ。ここで紹介される生き物たちに共通するのは、どの生き物たちも子孫を残すことに必死で、文字通り生命をかけている。交尾が成功すればその場で死ぬオス、卵を生んですぐに死ぬメス。子を育てない生き物は多い。

個人的にはアリとミツバチの生き方に共感するものがあった。働きアリも働きバチも自らの子孫は残さない。けれど彼ら彼女らは死ぬまで女王のために働き続ける。女王が産むのはすべて兄弟姉妹なわけで、そこからまた女王が生まれ生命は続いていく。それは親戚であり自分の遺伝子も含まれているのだから、決してただ生まれて死んでいくだけの存在ではない。働きアリも働きバチも未来の種族のために生き、死んでいくのだ。私も子供や孫の世代くらいまでのことは考えて豊かな地球環境を残してあげたいとこうしてブログにあれこれ書いているわけです。子供、いませんけど。